[[bc10-router]] #contents **bc10-router kernel 更新 [#aac487d9] bc10-router の起動イメージとして~ arago-project の beagleboard 用 arago-console-image を使用した場合、~ linux kernel の version は 3.3.7 になります。~ ~ これは、{HOME}/oe/arago/conf/machine/beagleboard.conf に書かれている~ PREFERRED_PROVIDER_virtual/kernel = "linux-stable" から {HOME}/oe/arago/recipes/linux/linux-stable_3.3.bb が kernel ビルド時の設定として使用されるためです。~ ~ git://git.kernel.org/pub/scm/linux/kernel/git/stable/linux-stable.git から 3.3.7 stable kernel を clone し、~ beagleboard 向けに {HOME}/oe/arago/recipes/linux/linux-stable/ にある~ -0001-ARM-OMAP-Cleanup-Beagleboard-DVI-reset-gpio.patch -0001-ARM-OMAP2-UART-Fix-incorrect-population-of-default-u.patch の二つの patch を当てたものが bitbake でビルドされます。~ ~ この default の kernel を使用した場合も家庭用ルーターとしては十分な性能を得られていますが、~ 以下のような点に関して性能を追及するため kernel を更新し、性能に改善がみられるか確認を行いました。~ -より高いネットワークスループット -より高速な無線LAN接続 -より少ない消費電力 Android を使用したスマートフォンなどの普及により、 Linux kernel の ARM SoC 向けソースコードは~ 近年開発が非常に活発になっており、kernel を更新することで Ethernet や無線LANのドライバー、無線LANサブシステム、~ パワーマネージメントなどの性能向上が見込めるためです。~ **kernel 更新手順 [#ec30883e] bc10 向けの kernel の更新は beagleboard 向けの kernel 更新と同じソースコードを利用して行います。~ ***RobertCNelson リポジトリ [#s41a9562] Beagleboard、Pandaboard など TI の OMAP/Sitara シリーズ SoC 向けのパッチを含むカーネルビルド環境を提供している~ RobertCNelsonリポジトリ~ https://github.com/RobertCNelson/linux-dev~ から環境一式を取得します。 $ mkdir {work_dir} $ cd ~/{work_dir} $ git clone https://github.com/RobertCNelson/linux-dev.git $ cd linux-dev 作業時点での master branch がどの version の kernel をビルドする設定になっているか、version.sh を確認します。 #Kernel/Build KERNEL_REL=3.8 KERNEL_TAG=${KERNEL_REL}-rc3 BUILD=d0 2013年1月末時点で default は 3.8 の開発ブランチになっているので、すでに安定版がリリースされている 3.7 にブランチを切り替えます。 $ git branch -a * master remotes/origin/HEAD -> origin/master remotes/origin/am33x-v3.1 remotes/origin/am33x-v3.2 remotes/origin/am33x-v3.6 remotes/origin/am33x-v3.7 remotes/origin/master $ git checkout -b am33x-v3.7 remotes/origin/am33x-v3.7 ビルド対象を切り替えたら設定ファイルの整備を行います。~ 予め用意されている sample をコピーし、~ $ cp system.sh.sample system.sh ARM GCC CROSS Compiler と、uImage のビルドに関する設定がコメントアウトされているのを~ 有効に戻し、設定を行います。~ #ARM GCC CROSS Compiler: (See hints in Readme, for different gcc cross compiler versions) #CC=arm-linux-gnueabi- CC=arm-arago-linux-gnueabi- ###OPTIONAL: BUILD_UIMAGE: also build uImage vs just zImage # BUILD_UIMAGE=1 ###OPTIONAL: ZRELADDR: needed when building uImage's. # ##For TI: OMAP3/4/AM35xx ZRELADDR=0x80008000 ti-sdk-beagleboard-05.05.01.00 の Cross Toolchain へ PATH を通してから~ build_kernel.sh を実行します。 $ export PATH={HOME}/ti-sdk-beagleboard-05.05.01.00/linux-devkit/bin:$PATH $ ./build_kernel.sh 実行すると {HOME}/linux-src/ に kernel ソースを git clone し、~ そこから ~/{work_dir}/linux-dev/KERNEL に 3.7.2 を checkout 後、~ ARM 用 OMAP 用 beagleboard 用の各種 patch を当てた上で menuconfig を行い(kernel config 用コンソールが開きます)、~ config を終了して save すると(save 後の .config は &ref(bc10-router-3.7.2.config); )ビルドが実行され~ deploy ディレクトリに以下のようなファイルが生成されます。~ $ ls -1 3.7.2-bone4.1-dtbs.tar.gz 3.7.2-bone4.1-firmware.tar.gz 3.7.2-bone4.1-headers.tar.gz 3.7.2-bone4.1-modules.tar.gz 3.7.2-bone4.1.config 3.7.2-bone4.1.uImage 3.7.2-bone4.1.zImage dtbs/ fir/ headers/ mod/ dtbs は 3.7 から ARM アーキテクチャーでも対応された [[DeviceTree:http://omappedia.org/wiki/Device_Tree]] 起動に必要なファイルですが、~ 今回は使用しません。~ uImage(3.7.2-bone4.1.uImage)と modules(3.7.2-bone4.1-modules.tar.gz)だけを使用します。~ ~ 一度 build_kernel.sh によるビルドが終わった後再度ビルドを行いたい場合は tools ディレクトリにある rebuild.sh を利用します。 $ ./tools/rebuild.sh ビルド出来たこれらのファイルを [[bc10-router/arago-project]] で作成した bc10-router 起動イメージにコピーして使用します。~ 起動用SDカードは fat パーティションが /media/FAT に、ext3 パーティションが /media/EXT3 に mount されているものとします。~ $ sudo -s # cp 3.7.2-bone4.1.uImage /media/FAT/uImage # tar xvfz 3.7.2-bone4.1-modules.tar.gz -C /media/EXT3 RobertCNelson リポジトリの 3.7.2 kernel への更新はこれで完了です。 *** kernel.org [#g43092fb] arago project の default kernel は、3.3.7 stable kernel に~ DVI 出力のための gpio の修正と uart のマルチプレクサの修正を加えているだけで、~ bc10 を起動するのに必要な beagleboard 向けのその他の修正は~ 3.3.7 以降の mainline kernel にはすでに取り込まれています。~ そこで、kernel.org で配布されている stable ブランチを使用して kernel を更新する手順も~ 確認しておきます。~ ~ まず kernel.org から最新 stable ブランチの kernel ソースコードを取得します。~ $ cd ~/ $ wget http://www.kernel.org/pub/linux/kernel/v3.0/linux-3.7.2.tar.bz2 $ tar xvfj linux-3.7.2.tar.bz2 ti-sdk-beagleboard-05.05.01.00 の Cross Toolchain へ PATH を通します。~ $ export PATH={HOME}/ti-sdk-beagleboard-05.05.01.00/linux-devkit/bin:$PATH kernel config はできるだけ arago project の default kernel と揃えるため、~ 3.3.7 をビルドした際の .config を元に作業し oldconfig を実行します。~ $ cp {HOME}/oe/arago-tmp/work/beagleboard-arago-linux-gnueabi/linux-stable-3.3.7-r115/git/.config . $ make ARCH=arm CROSS_COMPILE=arm-arago-linux-gnueabi- oldconfig 3.3.7 にはなかった 3.7.2 の新しい設定項目をどう設定するかをコンソール上で聞かれるので設定していきます。~ (Y で kenrnel 組み込みにするか、N で無効にするか、m でモジュールにするか)~ 設定をすべて終えたら 3.7.2 向けの新しい .config が出来ています。~ さらに調整したい項目がある場合は、oldconfig 完了後であれば menuconfig で設定できます。 $ make ARCH=arm CROSS_COMPILE=arm-arago-linux-gnueabi- menuconfig 設定が完了したらビルドします。 $ make ARCH=arm CROSS_COMPILE=arm-arago-linux-gnueabi- $ make ARCH=arm CROSS_COMPILE=arm-arago-linux-gnueabi- uImage ビルド完了後、kernel module を起動イメージ上へ展開する配置にするため~ 仮インストールします。~ $ mkdir tmp_install $ make ARCH=arm CROSS_COMPILE=arm-arago-linux-gnueabi- modules_install INSTALL_MOD_PATH=./tmp_install 完了すると tmp_install を rootfs の / として kernel modules をインストールした状態になっています。~ ~ 必要なのは arch/arm/boot/uImage と tmp_install/ の lib/ 以下のファイルなので、これを~ bc10-router/arago-project で作成した bc10-router 起動イメージにコピーして使用します。~ 起動用SDカードは fat パーティションが /media/FAT に、ext3 パーティションが /media/EXT3 に mount されているものとします。~ $ sudo -s # cp arch/arm/boot/uImage /media/FAT/uImage # cd tmp_install # cp -a lib/ /media/EXT3/ kernel.org の 3.7.2 kernel への更新はこれで完了です。 **Wi-Fiスループット [#k738cd7e] arago-project の beagleboard 向け default version の 3.3.7 kernel と~ Robert Nelson repositry を使用して更新した 3.7.2 kernel で~ Wi-Fi のスループットに向上が見られるかを確認しました。~ ~ bc10-router をルーターモードで起動させ、~ Wi-Fi アクセスポイントである bc10-router LAN 側インタフェースと~ そこに W-Fi クライアントとして接続している Netbook の Wi-Fi インタフェース間でのスループットを~ nuttcp で計測しました。~ ~ ***bc10-router wlan0---PC間 [#ja7882eb] nuttcpによる測定~ WAN側: bc10-router nuttcp -S~ LAN側: PC nuttcp 192.168.30.1~ -3.3.7~ kernel version(詳細) # uname -a Linux bc10-router 3.3.7 #1 Mon Nov 26 22:45:08 JST 2012 armv7l unknown BogoMIPS # cat /proc/cpuinfo | grep BogoMIPS BogoMIPS : 581.89 スループット(10回計測平均) |回 | 1| 2| 3| 4| 5| 6| 7| 8| 9| 10| Avg.|h |Mbps |50.7863|55.0793|53.6637|54.0530|52.7941|55.5915|54.8066|55.8982|54.8012|56.3797|54.3853| |%TX |6 |6 |7 |7 |6 |7 |6 |7 |7 |7 |7 | |%RX |23 |25 |24 |24 |24 |25 |25 |25 |25 |25 |25 | |retrans|0 |0 |0 |0 |0 |0 |0 |0 |0 |0 |0 | |msRTT |1.27 |1.62 |1.49 |1.40 |1.33 |1.35 |1.44 |1.40 |1.64 |1.92 |1.49 | -3.7.2~ kernel version(詳細) # uname -a Linux bc10-router 3.7.2-bone4.1 #3 Wed Jan 16 14:35:07 JST 2013 armv7l unknown BogoMIPS # cat /proc/cpuinfo | grep BogoMIPS BogoMIPS : 388.12 スループット(10回計測平均) |回 | 1| 2| 3| 4| 5| 6| 7| 8| 9| 10| Avg.|h |Mbps |36.3708|37.5193|37.8842|37.2199|37.4805|37.3811|34.5526|36.7064|38.0515|38.5973|37.1764| |%TX |4 |4 |8 |8 |8 |8 |7 |8 |8 |8 |1 | |%RX |25 |27 |38 |27 |26 |27 |25 |27 |26 |26 |10 | |%TX |4 |4 |8 |8 |8 |8 |7 |8 |8 |8 |7 | |%RX |25 |27 |28 |27 |26 |27 |25 |27 |26 |26 |26 | |retrans|0 |0 |0 |0 |0 |0 |0 |0 |0 |0 |0 | |msRTT |1.81 |1.92 |1.71 |1.73 |1.84 |2.08 |1.55 |1.96 |2.92 |4.16 |0.00 | |msRTT |1.81 |1.92 |1.71 |1.73 |1.84 |2.08 |1.55 |1.96 |2.92 |4.16 |2.17 | 残念ながら作業時点 2013/01/16 で最新の stable kernel である 3.7.2 への更新で~ ネットワーク性能の向上は得られませんでした。~ ~ 3.7 から ARM アーキテクチャでも DeviceTree に対応し、一つの kernel で複数の ARM アーキテクチャのマシンを起動できるようになるなど~ ソースコードの整理や共通化が進んだ半面、SoC ごと、マシンごとの最適化という点では一旦後退が見られ~ 性能が得られなくなっているものと考えられます。~ ~ あくまで性能を追求するのであれば arago-project の default である 3.3.7 kernel を使うのが良いのですが、~ linux kernel 更新による新機能の追加を取り込みたい、ARM アーキテクチャ向けコードの進歩を追いかけたい、といった場合には~ kernel の更新を考慮しなければなりません。