[[その他]] * 電源の種類 [#s0a19325] すべての電子回路は、その動作の元となる、電気エネルギー がないと動作することができません。 この電気エネルギーを供給するのが電源回路と言えるでしょう。一方で、エネルギーの流れからみると、電源回路の多くは、 商用電源や電池などから、電気エネルギーを得て、負荷の要求にあった形に変換して供給するエネルギーの変換回路というのが、 実態です。~ エネルギーの供給源となる商用電源は、家庭用のコンセントからでも簡単に1kW 以上の電力(エネルギー)を取り出すことができ、 そしてそれを連続的に供給できる電力量(能力)があります。取り扱いを誤ると、怪我や火災だけでなく、生命にも影響を及ぼす大きな事故を 招く危険があります。~ また、電池にしても、Li-ion電池による爆発や発火事故がいくつか報告されています。Li-ion電池は、そのエネルギー密度が高い (小さな容器に大きなエネルギーが蓄積されている)ためです。他の Ni-MH電池が Ni-Cd電池でも、取り扱いを間違えると、 発熱などにより、危険な状況になりかねません。~ しかし、安全に取り扱う方法についても広く知られているので、正しく知識と正しい安全対策を講じながら使えば、大きな危険はありません。 電源回路は、大きなものから小さなものまで、様々にあります。ここでは、主に 十数ワット以下の電子回路に使われるものを対象にします。 **安定化電源と 非安定化電源 [#ebb18658] 電子回路では、負荷の変動に関係なく、ある一定の電圧または、一定の電流でかつ変動のない電源を必要とすることがほとんどです。 前者を定電圧電源、後者を定電流電源と呼びます。そして このように一定の値になるように制御されている電源を安定化電源と 呼びます。一定の値になるように制御する仕組みが組み込まれていない電源は、非安定化電源と呼びます。 *** ACアダプタ [#z27faf6d] 小さな電子機器を買うと、専用のACアダプタが付属している場合があります。(別売りの場合もあります) また、 汎用製品として、ACアダプタ単体でも販売されています。これらを自作する電子機器の電源用に使うと手軽にかつ 比較的安全に使えるので、便利です。~ これらの出力は、直流の場合がほとんどですが、中には 交流のまま出力されるものもあります。どの様な電圧で、 どの程度の電流を供給できるか、また、端子の極性などはACアダプタに表示があるので、使う前には必ず確認をします。~ 電子回路の多くは安定化された定電圧を必要としますが、ACアダプタの出力は必ずしも安定化されているとは、 限りません。安定化に必要な回路が電子機器本体に内蔵されている場合には、必ずしも ACアダプタの出力が安定化 されている必要がないからです。~ 充電用などの一部を除き、電子機器を繋がない状態で、電圧を測定したとき、表示よりも高い電圧が出ている場合は、 非安定化タイプです。ほぼ同じ値の電圧ならば、安定化されていると考えて良いでしょう。~ **安定化の方法 [#u29b2d4a] 負荷の変動に関係なく、常に電源の電圧を一定の電圧に保つためには、一定に保つための制御回路が必要になります。 一般的にこの制御回路は、出力端子の電圧、または電流の値を監視しており、設定値からずれると、それを修正する 方向に電源回路自体を制御し、安定化させようとします。 ** シリーズ電源(リニア電源) [#nae5f095] 直列に制御用のパワー素子を入れて、出力を制御します。回路の概念図を下記に示します。 &ref(liner_drop.png); 入力から供給された電流は、トランジスタを通って、負荷に流れます。出力端子には、電圧を監視して、制御回路へ戻す フィードバック回路があります。トランジスタは、出力電圧と入力電圧の差を落とす(Dropする)抵抗として機能します。 キルヒホッフの第二法則から閉回路で生じる起電圧と、電圧降下の合計は等しいという法則があります。ここでは、 下記の式が成り立ちます。 入力電圧 = トランジスタでの電圧降下 + 負荷での電圧降下(つまり出力電圧) 従って、入力電圧は、常に出力電圧より高い電圧にしなければなりません。 フィードバック回路は、負荷の状態に応じて 一定の出力電圧となるように、トランジスタを制御し、あたかも自動的に差分の電圧を 落とす可変抵抗として機能するように制御しています。以下、トランジスタを可変抵抗として読み替えてみます。 もしも負荷が増加したとき(流れる電流が増えたとき)、出力電圧が低下してしまいます。可変抵抗の値 x 電流 = ドロップ電圧 ですから、電流が増えた分だけ ドロップ電圧が大きくなります。従って負荷が増えたときには、可変抵抗の値を小さくして、 ドロップ電圧を元の値に戻さなくてはなりません。一方で、負荷が減少したときにも、可変抵抗を大きくして、ドロップ電圧を 元の値に戻すようにして、出力電圧が一定になるように制御しています。 これは負荷の変動ばかりでなく、入力電圧の変動に対しても、同様な制御が行われています。 このドロップ電圧を制御を自動的制御して、出力電圧が一定になるような回路を構成することで、安定化電源を実現することができます。 もしも負荷が増加したときは、可変抵抗を小さくし、負荷が減少したときには、可変抵抗を大きくします。 この制御を自動的に行えるようにする回路を構成することで、安定化電源を実現することができます。 キルヒホッフの第二法則から閉回路で生じる起電圧と、電圧降下の合計は等しいことから 入力電圧 = 可変抵抗での電圧降下 + 負荷での電圧降下(つまり出力電圧) ということもわかります。ここでマイナスの電圧降下はないので、常に入力電圧は、出力電圧より可変抵抗で生じる 電圧降下の分だけ高い必要があることがわかります。 この式を変形すると次のようになります。 負荷での電圧降下(つまり出力電圧) = 入力電圧 − 可変抵抗での電圧降下 可変抵抗荷での電圧降下 = 入力電圧 − 負荷での電圧降下(つまり出力電圧) つまり、入力電圧から可変抵抗で電圧を生じさせて降下させれば、目的の出力電圧が得られることになります。 可変抵抗に生じる電圧は、オームの法則から求めることができます。 電圧 = 電流 × 抵抗 つまり、電流と抵抗の積になります。この値を一定にするには、電流が増えたときには、抵抗を小さくし、 逆の場合は抵抗を大きくすれば良いことがわかります。 また、負荷が変動しなくても入力電圧が変動することもあります。仮に入力電圧が上昇しても、入力電圧の上昇分を 可変抵抗で生じる電圧降下を増やせば、負荷に影響を与えることがありません。電流が一定の場合、可変抵抗の値を 大きくすれば解決します。逆に低下があった場合は抵抗の値を小さくします。可変抵抗では電圧降下しか生じませんので、 入力電圧が出力電圧より低い場合には、対応することができません。これが、入力電圧が常に出力電圧より高い 必要がある理由です。 この可変抵抗は、通常はトランジスタなどに置き換えられ、出力端子に接続されたフィードバック制御回路により、 自動的にコントロールされます。 ** スイッチング電源 [#s986040f] リニア電源の場合は、中間に抵抗(および相当するもの)を入れて、電圧を落としながら制御していました。 余ったエネルギーは抵抗の部分で熱エネルギーに変換され、損失として空気中に放熱されています。また、 原理的に 出力電圧を高くすることができません。(たとえば 1.5Vの電池から 3.3Vを得るなど)~ そこで、エネルギーが必要なときだけスイッチを ONにして、不要なときには OFFにするスイッチング電源が 使われるようになりました。ON/OFFされた電流をコイルに流したり、コンデンサを接続し、チャージポンプ を使って、昇圧したり、極性反転した電圧を作り出すことも可能になります。 その一方で、回路が複雑で部品点数が多く、高価になるため、アマチュアでは使われることが少ないようでした。 しかし、最近では、専用のICや小さく安価なパーツで構成できるようになっています。 ----- RIGHT:by ryuchi